<Header>
<Author: 杜甫>
<Title: 玉華宮>
<Format: 格式不明>
<Year: 1964>
<BookName: 唐詩選　上>
<Translator: 斎藤晌>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 玉華宮>
<BookPage: 33>
<UsedPage: 1>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
溪回松風長，
蒼鼠竄古瓦。
不知何王殿，
遺構絕壁下。
陰房鬼火青，
壞道哀湍瀉。
萬籟真笙竽，
秋色正蕭灑。
美人爲黃土，
況乃粉黛假。
當時侍金輿，
故物獨石馬。
憂來藉草坐，
浩歌淚盈把。
冉冉征途間，
誰是長年者。
<End Poem>
<Translation>
谷がめぐりあぐっているところ、松の林もつづいて颯々という風の音がたえない。年老いたねずみが人の足音におどろいて、そこらに散らばった古瓦の下へ逃げこんだ。これはなんといり王さまの建てられた宮殿か知らぬが、絶壁の下に一劃の建物があったあとが認められる。のこった建物の暗い室には燐火が青く燃えている。こわれた道路には早瀨の水があふれて、かなしげなひびきを立ててそそいでいる。せせらぐ流水、空吹く風、自然の全部がいっしょになって、むかしこの宮殿で演奏された、ほんとの笙や竽のような音楽をかなでているかと疑われる。あたりをこめた秋の色は、まったくさわやかでもの淋しいかぎりだ。ここの宮中に奉仕した美人も、今ではみんな黄色い土になってしまった。ましてその美人がつけた白粉や黛などというものは、跡方もない。當時、ここへおいでになった王きまの御興に扈從したもので、のこっているのは、ただ殿前にすえられた石の馬だけではないか。憂愁のおもいに胸がふさがれ、草をしいてそこへ坐った。聲高く歌をうたえば、涙があふれ出で、それを受けた手のひらにいっぱいになった。自分は、あてのない旅人の身の上だが、しかし自分だけではない。すべて人生行路をたどってゆくものは、永遠に生きつづけることなど誰にできようぞ。
<End Translation>
<Formatted Translation>
谷がめぐりあぐっているところ、松の林もつづいて颯々という風の音がたえない。
年老いたねずみが人の足音におどろいて、そこらに散らばった古瓦の下へ逃げこんだ。
これはなんといり王さまの建てられた宮殿か知らぬが、
絶壁の下に一劃の建物があったあとが認められる。
のこった建物の暗い室には燐火が青く燃えている。
こわれた道路には早瀨の水があふれて、かなしげなひびきを立ててそそいでいる。
せせらぐ流水、空吹く風、自然の全部がいっしょになって、むかしこの宮殿で演奏された、ほんとの笙や竽のような音楽をかなでているかと疑われる。
あたりをこめた秋の色は、まったくさわやかでもの淋しいかぎりだ。
ここの宮中に奉仕した美人も、今ではみんな黄色い土になってしまった。
ましてその美人がつけた白粉や黛などというものは、跡方もない。
當時、ここへおいでになった王きまの御興に扈從したもので、
のこっているのは、ただ殿前にすえられた石の馬だけではないか。
憂愁のおもいに胸がふさがれ、草をしいてそこへ坐った。
聲高く歌をうたえば、涙があふれ出で、それを受けた手のひらにいっぱいになった。
自分は、あてのない旅人の身の上だが、しかし自分だけではない。
すべて人生行路をたどってゆくものは、永遠に生きつづけることなど誰にできようぞ。
わが友が都を棄てて山に歸るというので、ここまで馬に乗って送ってきた。ここで馬をおりて路傍で別れの宴を張り、君に一杯飲んでもらうことにした。さて「君はなぜ歸ってゆくのか」と聞いた。すると、友はいった。「どうも世のなかが思うようにならないから、南山のかたすみへ歸って寝ころんでいようと思う」「そうか、そんなら行きたまえ、もう何もたずねまい。いいじゃないか。君が行くさきの南山には白い 雲が湧き起こって盡きるときがないんだ」
<End Formatted Translation>